二つの封筒
作成日:2017.10.29
最終更新日:2020.12.14
タグ: 短編
前書き
この話は「二つの封筒の問題」(英語版wikipedia)を基にしている。
本編
パズル好きの父が上機嫌で我々兄弟のもとにやってきた。
気分が良いから臨時でお小遣いをくれるとのこと。
赤と青の二つの封筒があり、片方には他方の倍額が入れられているらしい。
それぞれがどちらの封筒をもらうかを話し合いで決めるまでは渡さないということなので、早速話し合いに取り掛かった。
弟は青の封筒が良いと言った。
自分はどちらでも良いと思っていたので反対しなかった。
しかし、しばらく経ってから弟はやっぱり赤の方が良いと言い出した。
自分はどちらでも良いと思っていたので、今度も反対しなかった。
しかし、またしばらく経ってから弟はやっぱり青の方が良いと言い出した。
自分はどちらでも良いと思っていたので、今度も反対しなかった。
しかしまたしばらく経ってやっぱり赤の方が良いと言い出した時には、さすがに待ったをかけた。
なぜ何度も変えようとするのか尋ねると、弟は変えた方が得だからと答えた。
今選んでいる封筒に入っている額を$x$とすると選んでいない封筒には$2x$か$0.5x$のいずれかの額が入っていることになるから、変えた時の期待値は$1.25x$であると思うとのこと。
一瞬困ったが、封筒を選ぶ前の対称性からこの議論がおかしいことに気付いた。
そのことを指摘したが、父とは違い弟は頭が固いので理解してくれなかった。
30分間説得を試みたが理解を得られなかった。
そこで、封筒をもらった後に中身を二人で等分することを提案した。
はじめ弟はそれだと期待値が$1.125x$だと言って受け入れなかった。
もらえる額の最小値は最大化されると主張しても首をかしげるだけだった。
さらに等分できなかった分は弟が取ることにすると言ったら、ようやく受け入れてくれた。
話し合いがまとまったので、にこにこしている父のもとに行き封筒をもらった。
わくわくしながら封筒を開けてみると、中身は空っぽだった......。
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