人生は長すぎる
作成日:2017.11.09
タグ: 短編
若い頃には長生きすることに憧れもあった。
しかし平均寿命が延びていくにつれ、終わりが来ないことに恐怖を感じるようになった。
自らの手で終わらせることもできたのかもしれないが、そんな勇気はなかった。
年をとる。一方で平均寿命は延びる。このいたちごっこは永遠に続くように思われた。
しかし後者の方が遅かった。
余命は確実に短くなっていき、人生の終わりがようやく訪れる。
若い頃の自分なら不思議に思うのだろうが、この事実に対して安堵感がわいてきた。
心の中で人生は長すぎたとつぶやきながら、静かに目を閉じた。
ゆっくり目を開ける。そして深く溜め息をつく。
ここは死という概念がなくなった世界。
終わりのないことから生じる味気無さを紛らわすために、人々は終わりのある人生を体験する装置に向かい続ける。
自分も例外ではない。
心の中で人生は長すぎると叫びながら、再び装置に向かった。
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